虐待する人の特徴・自己愛性人格障害(NPD)
虐待とは、常習的な暴力や暴言、冷淡な態度などにより、人を傷つける行為です。
虐待の多くは家庭内で起きており、立場の弱い子供や高齢者がターゲットとなります。配偶者へのDVも虐待の一種です。
また、保育園での保育士から園児に対する虐待や、高齢者施設・障害者施設でのスタッフから入所者に対する虐待も多く発生しており、社会問題となっています。
虐待する人は、自己愛性人格障害(NPD:自己愛性パーソナリティ障害)という病気の可能性が高いです。
自己愛性人格障害は、自己中心性や共感力欠如、支配欲を特徴とする病気です。
虐待行為には、ある種の依存性があり、弱い者に対する虐待癖は簡単には治らないのです。
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虐待の中で、最も深刻なのは、児童虐待でしょう。
子供はまだ自立して生活することができないため、必ず弱い立場になります。
また、年齢が低いほど、自分が受けている被害を説明することができなかったり、自分が被害を受けているという自覚をはっきり持てなかったりします。
子供に対する虐待加害者は、「躾のためにやった」と必ず言いますが、これは都合のいい言い訳です。
実際は、ストレス発散のための暴力暴言なのですが、それを正直に言うと罪が重くなるため、「躾」という言葉を利用しているのです。
また、昭和世代の中には、「昔は体罰なんて当たり前だった。躾のための体罰は時には必要だ。」と、体罰容認論を振りかざす人がまだまだ多いです。
しかし、体罰容認派の人たちは、自身の老化が進んで介護が必要となった時、介護者から虐待を受けても仕方がないと納得できるのでしょうか?
「いかなる理由であっても虐待・体罰はダメ」という考え方を社会で共有していないと、自分が弱い立場に置かれた時、虐待のターゲットとされてしまうのです。
虐待問題は、決して他人事だと思ってはいけません。
虐待は、最も身近な人権侵害といっていいでしょう。
また、虐待とイジメはよく似ていますが、虐待は家庭や入居施設といった閉鎖性が強く、外部に露見しにくい環境で発生するという特徴があります。
外部にバレないという安心感から、虐待行為がエスカレートしやすいという点、被害者は生活における身近な人物から暴力暴言を受け続け、逃げる先がないという点などから、深刻な事態になりやすいです。
特に家庭での虐待は、「家の問題は家の中で解決すべき」という価値観や、民事不介入によって放置されやすい傾向があります。
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なぜ、家庭や施設で虐待をする人がいるのでしょうか?
虐待加害者は、自己愛性人格障害(NPD)という精神疾患である可能性が高いです。
自己愛性人格障害の自己中心性、共感力欠如、支配欲の症状は、虐待の原因となりやすいからです。
虐待加害者は、子供の躾や、仕事のブラックさを言い訳にしますが、普通の人は虐待などしないのです。
【目次・虐待加害者の特徴】
それぞれの特徴について、解説していきたいと思います。
自己中心性
虐待は、ストレス発散を目的とした、八つ当たりであることが多いです。
自己愛性人格障害は、自己中心的であり、ストレスが溜まると暴力的になるという特徴があります。
自分より弱い相手を攻撃すると、脳に快楽物質が放出される人がいることが知られています。
自己愛性人格障害者は、この快楽物質に依存しやすいのです。
虐待をする人は、いわば暴力暴言依存症なのです。
他の依存症と同様、虐待依存を根治させることは難しいでしょう。
また、自己中心性が強い人は、自分の思い通りにならないと、癇癪を起こすという特徴もあります。
思い通りにならなくてカッとなった時に、暴力や暴言が出る性質も、虐待につながります。
カッとなったら何をするか分からない人と一緒に生活するのは、精神をすり減らしてしまいます。
しかし、当の本人は、自分はアンガーコントロールできない人間だという自覚を持っていないのです。
虐待家庭で育った人の中に、人の顔色を伺うのが得意な人がいるのは、このためです。
共感力の欠如
虐待加害者は、他者への思いやりや、人間らしい情緒を持たない人が多いです。
自己愛性人格障害は、共感力が欠如しており、人の気持ちを想像できないという特徴があります。
周囲に優しい言動をすることが全くなく、人を傷つけたり、気分を害したりするような言動が目立ちます。
そのため、自己愛性人格障害者は、周囲から「心のない人」と表現されることがあります。
共感力が欠如していると、他者の辛い気持ちを理解できず、人を傷つけても罪悪感を持たず、反省することもありません。
虐待を受ける人の気持ちが想像できないため、平気で暴力や暴言を繰り返すのです。
何となく嫌いだからとか、面白半分のイタズラのつもりで、重大な身体的、精神的なダメージを相手に負わせることもあります。
自分の言動の何が問題なのか本質的に理解できないため、加害癖を治すことは難しいです。
支配欲
親から子への虐待の場合、虐待親は「子供は親の所有物」という価値観を持っています。
自己愛性人格障害は、支配欲が強く、優位な立場に立ちたいという願望を持つ傾向があります。
しかし、仕事や地域活動で優位な立場に立つことは、簡単なことではありません。
そのため、自己愛性人格障害者は、親は子供に対して絶対的に優位な立場であると、歪んだ家族観を持つことが多いのです。
親から虐待を受けて育った子供の中には、「立場が上の人は、下の人に何をしてもいい」という親の価値観を受け継ぐ場合があります。
例えば、子供の体格が親を超えた時点で親子の立場が逆転し、子供が親に対して暴力を振るうようになるケースがあります。
自身が家庭を持つと、子供や配偶者に暴力を振るい、虐待の連鎖となるケースもあります。
また、学校でクラスメイトをいじめる子供は、家庭で親から同じことをされている場合があることが知られています。
もちろん、虐待を受けて育った人の全てがそうなる訳ではありません。
むしろ、虐待親を反面教師とし、自分はそうなりたくないと努める人の方が多いです。
関連記事:「自己愛性人格障害の3タイプ 承認欲求・支配欲・損得勘定」
まとめ
虐待と自己愛性人格障害の関係について解説しました。
自己愛性人格障害の自己中心性、共感力欠如、支配欲の症状は、虐待加害者になる原因となります。
日本では、「問題のある親でも、子供にとっては唯一の存在」という価値観が根強く、児童相談所で保護された子供が、リスクの高い親にすぐ返されてしまうことが多いです。
また、親から子への虐待の罪が軽く見られており、虐待死事件でさえ親には軽い判決しか出されません。
他人の子供を殺害した場合は、重い判決が出ることを考えると、理不尽としか言いようがありません。
本来、子供を保護する責任のある親が、子供に加害している訳なので、むしろ重い判決が出されるべきでしょう。
あなたの周りに、虐待をしている人はいませんか?
虐待は、誰から誰に対するものであっても、れっきとした犯罪です。
もし、虐待行為に気がついたら、通報や内部告発によって被害者を助けるべきでしょう。
また、もし自分が弱い立場に置かれ、虐待を受けたとしたら、勇気を出してその状況から抜け出すことを考えましょう。
世の中に、虐待されていい人なんていません。虐待のない社会が、現代人の目指すべき道でしょう。