嘱託殺人(自殺ほう助)とは?自己愛性人格障害の特徴

嘱託殺人とは、自殺願望のある人の依頼に応じて、その人を殺害することです。自殺ほう助とも呼ばれます。
近年は、SNSによって、自殺願望のある人と、嘱託殺人をしたい人が繋がりやすく、嘱託殺人が増加傾向にあります。
「#死にたい」、「#死にたい人と繋がりたい」といったハッシュダグを入れるだけで、両者が簡単に繋がってしまうのです。
嘱託殺人犯は、安楽死賛成派であったり、嘱託殺人は需要のある必要悪だと認識していたり、「死にたい人の手伝いをしただけ」と主張したりして、罪の意識が薄いのが特徴です。
嘱託殺人犯の精神性には、命の軽視、短絡的思考、歪んだ使命感などの共通点が見られます。
これらの精神性の根底には、共感力欠如、自己中心性、特別意識があると考えられます。
そのため、嘱託殺人をする人は、自己愛性人格障害NPD自己愛性パーソナリティ障害)という病気の可能性が高いです。

嘱託殺人犯は、被害者から料金をとり、ビジネス化しようとする傾向があります。
嘱託殺人犯は、殺人という普通の人が忌避する行為を平気でできる自分は特別な人間だと考え、嘱託殺人は自分の天職だと認識しているためでしょう。
「死なせてほしい」という需要があるのだから、仕事(サービス)として、それを提供してもいいのではないか、とドライな感覚で行動に移しているのです。
また、被害者に証拠を残さない形で失踪するようメッセージで指示し、犯行が発覚しないようにするという、冷静で巧妙な知能犯の一面もあります。
今のところは、嘱託殺人は単独犯や二人組による犯行しか起きていませんが、SNSで嘱託殺人願望のある人達が繋がり、組織化するリスクがあります。
嘱託殺人はSNS時代の新たな社会問題と捉え、SNSに対する規制も含め、抜本的な対策が必要でしょう。

嘱託殺人犯の多くは男性で、被害者の多くは女性です。
これは、嘱託殺人犯は自己肯定感が低く、歪んだ使命感や優越感とは裏腹に、臆病な性格をしているためでしょう。
加害性のある男性は女性を、力が弱くて反撃されず、自分の思い通りにコントロールしやすい安心できる対象だと認識します。
多くの無差別殺人犯が、「誰でもいいから人を殺したかった」と供述するのに、実際は女性ばかり狙っているのも、同じ理由です。

なぜ、嘱託殺人という異様な犯罪が起きるのでしょうか?
嘱託殺人犯の多くは、自己愛性人格障害(NPD)という精神疾患であると考えられます。
自己愛性人格障害は、共感力欠如、自己中心性、特別意識を特徴とする精神疾患です。
共感力の欠如による命の軽視、自己中心性による短絡的思考、特別意識による使命感・優越感が、嘱託殺人犯の精神的特徴と一致しているのです。

【目次・嘱託殺人犯の特徴】

  • 共感力の欠如による命の軽視
  • 自己中心性による短絡的思考
  • 特別意識による使命感・優越感
  • まとめ
  • それぞれの特徴について、解説していきたいと思います。

    共感力の欠如による命の軽視

    嘱託殺人犯は、共感力が欠如しており、人間らしい情緒を持たないという特徴があります。
    冷血で、人の気持ちや感情に無頓着で、機械的な思考しかできません。
    SNSで死にたい人を探し、誘い出して殺害するというのは、共感力が欠如していないとできないことです。
    嘱託殺人犯は、死にたい人の辛さ、殺される人の苦しみ、残された家族や友人の悲しみを感じ取ることができないのです。
    嘱託殺人犯は、人を何人殺しても何も感じない、殺人マシーンとしか言いようがありません。

    嘱託殺人犯は、人の気持ちが分かりませんが、心が弱っている人を機械的に操るのは得意という特徴があります。
    精神的に不安定になっている女性は、他者の優しさを求める依存傾向に陥るケースがあります。
    嘱託殺人犯は、そのような女性をターゲットとし、表面的に優しい文面で信用させ、自分に会いに来るようコントロールするのです。
    このような事件が起きると、「SNSで知り合った変な人に会いに行く被害者にも落ち度がある」と考える人もいるかもしれません。
    しかし、それはメンタル不調を経験したことのない、強者の理論でしょう。
    メンタル不調で判断力の低下した人専門のハンターが存在するのです。

    自己愛性人格障害の症状に、共感力の欠如があります。
    共感力が欠如していると、他者の気持ちに興味が持てず、自分の目的や願望のためだけに行動を取るようになります。
    自己愛性人格障害者は、可哀想な境遇の人を見ても心が動かなし、人を喜ばせたいと考えることもありません。
    他者に配慮せず、自己満足のために淡々と行動するため、トラブルメーカーになりやすいです。
    犯罪者の被害者に対する異常な冷淡さは、自己愛性人格障害による共感力欠如による症状の可能性があるでしょう。

    関連記事:「共感力の欠如とは?自己愛性人格障害の特徴」

    自己中心性による短絡的思考

    嘱託殺人犯は、思考が短絡的かつ利己的であり、軽い考えで殺人を犯すという特徴があります。
    「相手が自殺願望を持っていたから」、「人を殺すことに興味があったから」といった浅い動機で、殺人という取り返しのつかない事件を起こすのです。
    嘱託殺人犯は、SNSで「死にたい」と発信する人の多くが、ただ悩みを聞いてほしいだけで、本当に死にたいと思っている訳ではないと理解しています。
    被害者の自殺願望を利用して、自身の殺人欲求を満足させたり、金銭を奪ったりするのが目的なのです。

    自己愛性人格障害の症状に、自己中心性の強さがあります。
    自己中心性が強いと、身勝手な理由で、他者を平気で害するようになります。
    人を傷つけたり、迷惑をかけたりするため、人が離れていき、孤立してしまいます。
    犯罪者の開き直った反省しない態度は、自己愛性人格障害による自己中心性による症状の可能性があるでしょう。

    関連記事:「自己中心性とは?自己愛性人格障害の特徴」

    特別意識による使命感・優越感

    嘱託殺人犯は、特別願望をこじらせ、歪んだ使命感や優越感を抱いている、という特徴があります。
    平気で人を殺せる、感覚が普通でない自分に特別感を見出しているのです。
    また、判断力が鈍っている人を言葉巧みにコントロールすることに優越感を覚えています。
    安楽死賛成派の嘱託殺人犯の場合は、独善的な使命感を振りかざし、自己正当化します。

    自己愛性人格障害の症状に、特別意識の強さがあります。
    特別意識が強いと、自分は特別だと思い込んだり、特別でない自分にフラストレーションを抱いたりします。
    「とにかく特別な存在になりたい、特別である根拠は何でもいい」という、歪んだ特別願望を抱くケースも見られます。
    承認欲求を満たすため、自身の異常性をSNSでアピールしたり、誇示したりします。

    また、嘱託殺人は、自己愛性人格障害の二次障害である「メサイアコンプレックス」との関連もあるでしょう。
    メサイアコンプレックス(救世主妄想)とは、自己肯定感の低さを、他者を助けることによる自己有用感によって補償しようとする精神状態のことです。
    死にたい人の望みを叶えることで、自己満足を得ているケースもあると考えられます。
    しかし、嘱託殺人犯は、本当の意味で被害者を救済したいという気持ちはなく、被害者の悩みに寄り添うという思いやりは持ちません。

    関連記事:「特別意識とは?自己愛性人格障害の特徴」

    関連記事:「承認欲求とは?自己愛性人格障害の特徴」

    まとめ

    嘱託殺人と自己愛性人格障害の特徴について解説しました。
    自己愛性人格障害の共感力欠如、自己中心性、特別意識が、嘱託殺人犯の思考のベースとなっていると考えられます。
    SNS世代は、最も気軽なコミュニケーションの手段であるSNSを使用して、悩みを解決しようとしてしまうため、このまま対策を打たずに放置すれば、嘱託殺人は増えることはあっても減ることはないでしょう。
    SNSを利用することで、嘱託殺人犯が半グレのように組織化することも可能性として考えられます。
    自己愛性人格障害は治らない病気であるため、嘱託殺人予備軍そのものを減らすのは難しいです。
    そのため、嘱託殺人のツールとなっている匿名のSNSに対する規制を含めて、対策が議論されるべきでしょう。