摂食障害(ED)とは?自己愛性人格障害の二次障害
摂食障害(ED: eating disorder)とは、体型と体重への強いこだわりと、太ることへの忌避感から、食行動に異常をきたす精神疾患です。
摂食障害には、極度の食事制限によって病的に痩せる拒食症、食べ物を衝動的にドカ食いする過食症、食べたものを吐き戻す過食嘔吐などがあります。
理想の体型のための行き過ぎたダイエットから拒食症を発症し、重症化すると拒食症と過食症を繰り返すようになり、食行動をコントロールできなくなってしまいます。
摂食障害は単体の病気ではなく、自己愛性人格障害(NPD:自己愛性パーソナリティ障害)の二次障害として発症している可能性が高いです。。
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近年は、SNSでインフルエンサーやフォロワーの影響を受けることで、摂食障害のリスクが上がっているのではないかと指摘されています。
しかし、摂食障害の根本原因は、痩せ信仰やルッキズムなどの外部要因ではなく、本人の気質が大きく関係しています。
若い女性は多かれ少なかれ体型を気にするものですが、摂食障害になるのは、ごく一部です。
モデルのような細身の体型に憧れて、ダイエットし過ぎてしまう人はそれなりにいるのですが、ほとんどは周囲の指摘や鏡に映った自身の姿によって、痩せすぎた自分を自覚してダイエットを止めることができます。
摂食障害のポイントは、ガリガリにやせ細った自分の体型を美しいと盲信する「認知の歪み」です。
この認知の歪みによって、周囲から「痩せすぎだよ」と心配されても、「痩せてキレイになった自分に嫉妬しているだけ」と解釈し、ダイエットを続けてしまうのです。
摂食障害は、極端な食行動に目が行きがちですが、認知の歪みによるボディ・イメージのズレが本質です。自己愛性人格障害(NPD)は、過剰な承認欲求、自己中心性、依存心を特徴とする病気のため、ダイエットに興味を持ちやすく、認知の歪みを起こしやすいのです。
摂食障害となる人は、育った家庭環境に問題があることが多いと言われています。
自己愛性人格障害は、溺愛やネグレクトによって、親から適切な躾と愛情が与えられないことによって、発症します。
つまり、問題のある家庭環境→自己愛性人格障害→摂食障害という流れで、発症していきます。
根本原因となっている自己愛性人格障害を改善させないと、摂食障害を治すことは難しいです。
【目次・摂食障害の原因となる自己愛性人格障害の症状】
それぞれの特徴について、解説していきたいと思います。
承認欲求
摂食障害の人は、承認欲求が高く、ダイエットの成果をアピールして、賞賛や褒めを得ようとします。
摂食障害の人の心理には、体型や体重を自慢したいという気持ちと、ダイエットを続ける努力を褒められたいという気持ちがあります。
見た目の美しさと、努力を継続できるストイックさの両方を賞賛されたいのです。
体重の数値はスコア、浮き出た肋骨や鎖骨は痩せの勲章であり、ダイエットの達成感やライバルとの競争心を刺激するものとして機能します。
最初のうちは体重や体型でマウントを取ることが動機ですが、病気が進行すると、体重が増えることへの恐怖心や罪悪感に支配されたような状態となってしまいます。
自己愛性人格障害の代表的な症状の一つに、過剰な承認欲求があります。
自己愛性人格障害の原因は、親から溺愛されて育つことで自己愛が肥大化する、あるいは、放任主義やネグレクトでまともな躾を受けなかったことで幼児的な万能感が残ったままになることです。
肥大化した自己愛や幼児的な万能感は、自分は賞賛されるべき特別な存在だという認知を生んでしまいます。
そのため、自己愛性人格障害者は、常に賞賛を求め、少しの批判も許さない、ワガママなかまってちゃん気質となるのです。
また、理想の自分が高すぎることで、現実の自分とのギャップに苦しんだり、嫉妬から人に八つ当たりしたりすることになります。
承認欲求が強い自己愛性人格障害者がダイエットに異常にハマった状態が、摂食障害といえるでしょう。
関連記事:「承認欲求とは?自己愛性人格障害の特徴」
自己中心性
摂食障害の人は、自己中心性が高く、自分が絶対に正しいと思い込みやすいという特徴があります。
承認欲求が高くても、周囲の意見を聞いたり、痩せすぎた自分に気づくことができれば、ダイエットがエスカレートすることはありません。
つまり、摂食障害の2つめのポイントは、思い込みの強さや客観視の欠如なのです。
思い込みが強いと、ガリガリに痩せたことを心配されてダイエットを止めた方がいいと言われても、「もっと痩せたい、もっと痩せるべき」という考えに囚われていて、突き進んでしまいます。
また、客観視が欠如していると、鏡で骨が浮き出た自身の体を見ても、歪んだボディ・イメージによって、キレイだと認識してしまいます。
自己愛性人格障害の症状の一つに、自己中心性の高さがあります。
自己中心性が高い人ほど、自分が絶対に正しいという思考が強く、思い込みの激しい人となります。
現実とは異なることを自分に都合のいいよう思い込むことを、「認知の歪み」といいます。
自己愛性人格障害者は、この認知の歪みによって、極端な行動を取ったり、敵認定した人を排除したり攻撃したりするのです。
いくら周囲の人が現実的なアドバイスをしても、無視したり否定したりするため、間違った考えや行動を正すことができず、妄想性のリスクの高い人物となります。
依存心
摂食障害の人は、ダイエット依存症のような状態となっています。
自己肯定感を上げたり、不安を解消したりするための方法が、ダイエットになってしまっているのです。
例えば、学業やスポーツで成果を出すには、毎日の勉強や練習をする努力と、一定以上のセンスが必要となります。
それに比べると、食欲を我慢するだけで体重減少という分かりやすい成果が出るダイエットは、手軽に達成感が得られる努力という訳です。
自己愛性人格障害の症状の一つに、依存心があります。
自己愛性人格障害者は、自分に甘く、ドーパミンなどの快楽物質がもたらす快感に執着しやすいという特徴があるのです。
そのため、ギャンブル依存症や恋愛依存症、セックス依存症などになりやすい傾向があります。
摂食障害も、ダイエットハイと呼ばれる快感が得られる症状があるため、自己愛性人格障害者はそれに依存してしまうのです。
関連記事:「スピリチュアルにハマる人の特徴・自己愛性人格障害」
まとめ
摂食障害と自己愛性人格障害の関係について解説しました。
摂食障害は、自己愛性人格障害の二次障害として発症することが多いです。
自己愛性人格障害者は、過剰な承認欲求、自己中心性、依存心といった症状があるため、摂食障害になりやすいのです。
摂食障害を治すには、根本原因の自己愛性人格障害を改善させる必要があります。
ただ、自己愛性人格障害は、自身の落ち度を指摘されると、被害者意識を持ったり、自分は悪くないと開き直ったりする傾向が強いため、治すのが難しい精神疾患です。
あなたの周りに、極端なダイエットをしている人はいませんか?
ダイエットに成功して痩せた人を褒めると、もっと褒められようと食事制限がエスカレートして、健康を損なうかもしれません。
また、拒食症の人に、痩せすぎ、ガリガリと注意しても、褒め言葉として曲解され、危機感が伝わらないこともよくあります。
摂食障害は、れっきとした精神疾患で素人だけで治せるものではないため、メンタルクリニックにつなげる必要があるでしょう。