教育虐待とは?自己愛性人格障害の特徴

教育虐待とは、児童虐待の一種で、親が子供に高い目標を押しつけることです。
例えば、子供に学業成績やスポーツの大会、音楽コンクールなどで良い成果を出すことを要求します。
教育虐待は、体罰による身体的虐待と、人格否定による心理的虐待、成績以外に無関心なネグレクトの要素を持つ複合的な虐待と言えます。
教育虐待をする親は、子供から毒親と認識され、恨まれたり嫌われたりしていることが多いです。
教育虐待する親は、自己愛性人格障害(NPD)という病気である可能性が高いです。

関連記事
「毒親とは?自己愛性人格障害の特徴」
「虐待とは?自己愛性人格障害の特徴」
「学歴至上主義とは?自己愛性人格障害の特徴」

教育虐待は、子供の精神の発達に悪影響を与えることが知られています。
秋葉原通り魔事件(2008年)の加害者も、苛烈な教育虐待を受けていたことが明らかになっています。
教育虐待をする親は、「子供のためを思ってやった」、「躾のためにやった」と必ず自己正当化しますが、身体的暴力や言葉の暴力に頼った時点で、教育や躾の一環だと言うことはできません。
教育虐待により、力で人を支配することを知った子供が、親と体格が逆転すると反逆し、家庭内暴力で親を支配するケースも珍しくありません。
さらには、教育虐待がエスカレートした結果、親子間の殺人事件に発展するケースまで起こっています。
中学受験に過熱した父親が、小学生の子供を殺害した事件が有名です。
逆に、教育虐待によって精神的に追い詰められた子供が、親を殺害する事件も起きています。
また、教育虐待が原因で、子供が精神疾患になったり、自殺したりするリスクも大きいのです。

なぜ、子供のための教育として虐待を行ってしまう親がいるのでしょうか?
教育虐待親は、自己愛性人格障害NPD自己愛性パーソナリティ障害)という病気です。
自己愛性人格障害の代表的な症状は、自己中心性、特別意識、共感力欠如です。
これらの症状は、子供に身体的虐待、心理的虐待、ネグレクトをする根本的な原因となります。

【目次・教育虐待の要素】

それぞれの特徴について、解説していきたいと思います。

体罰による身体的虐待

教育虐待の多くは、体罰による身体的虐待が伴います。
身体的虐待には、叩く、突き飛ばすなどの暴力の他、長時間正座させる、熱い日や寒い日に屋外に放置するといった行為が該当します。
教育虐待における体罰は、子供の成績が悪い、子供が勉強をサボった、子供の態度が反抗的といった理由で行われます。
また、勉強や習い事とは関係なく、子供の行動がイメージ通りでない、気に食わないという理不尽な理由で、体罰を行う親も存在します。
教育虐待による暴力は、親から子へのパワハラといっていいでしょう。

自己愛性人格障害の自己中心性、特別意識、共感力欠如は、子供への暴力のハードルを低くする原因となります。
自己中心性が高いと、「教育のための体罰だから問題ない」、「親の言う通りにできない子供が悪い」と暴力を正当化し、反省しません。
特別意識が強いと、親としての自分を特別視し、「親は子供より立場が上だ」、「親から子への暴力は問題ない」と考え、子供の人権を無視します。
共感力が欠如していると、暴力を振るわれた子供が泣く姿を見ても、可愛そうという感情が湧いてこないため、暴力のストッパーが働きません。
そのため、自己愛性人格障害の親が教育熱心になると、暴力に頼る子育てを行ってしまうのです。

人格否定による心理的虐待

教育虐待の多くは、人格否定による心理的虐待が伴います。
心理的虐待には、言葉の暴力で子供を人格否定する、目標や進路を一方的に押しつける、勉強や練習の重いノルマを課すといった行為が該当します。
親から子への言葉の暴力には、罵詈雑言や嫌味、皮肉の他、兄弟や同級生との比較などがあげられます。
また、本来子供自身が決めるものある進路や目標を、親が一方的に決めて押しつけるのも、子供の人格を否定することになります。
子供を一人の人格として認めず、親の所有物のように扱うこと自体が、心理的虐待となるのです。
教育虐待による心理的虐待は、親から子へのモラハラといっていいでしょう。

自己愛性人格障害の自己中心性、特別意識、共感力欠如は、子供への人格否定の原因となります。
自己中心性が高いと、「自分は絶対に正しい」、「子供は親の言うことを聞いていればいい」と考え、自分の考えや価値観を子供に押しつけます。
特別意識が強いと、親としての自分を特別視し、「子供は親より立場が下だ」、「子供が親に従うのは当然のことだ」と考え、子供の考えや価値観を無視します。
共感力が欠如していると、親の考えを押しつけられる子供の気持ちを想像できないため、一方通行のコミュニケーションをとることになります。
そのため、自己愛性人格障害の親が教育熱心になると、子供の人権を無視する子育てを行ってしまうのです。

関連記事:「モラハラとは?自己愛性人格障害の特徴」

成績以外に無関心なネグレクト

教育虐待の多くは、成績以外に無関心な精神的ネグレクトが伴います。
教育虐待でのコミュニケーションは、成績が良い時だけ褒め、成績が少しでも悪いと厳しく叱責するというものです。
あるいは、「成績が良くて当たり前だ」という態度で、子供を全く褒めない親も存在します。
教育虐待親は、子供の成績にしか興味がなく、それ以外の子供の個性や気持ちに向き合いません。
テストの点数や、大学の偏差値、大会やコンクールの順位といった数字に執着しているだけで、子供への愛着を持っていないのです。
子供には、親に自分の考えや気持ちを聞いてほしいという感情があり、それを無視することは、精神的なネグレクトとなるのです。
精神的ネグレクトを受けた子供は、自分の理解者がいないことで、孤独になったり不安定になったりしてしまいます。

自己愛性人格障害の自己中心性、特別意識、共感力欠如は、子供の内面を見ない原因となります。
自己中心性が高いと、「自分だけが良ければいい」、「親の言う通りにできない子供が悪い」という価値観になり、子供の気持ちについて考えなくなります。
特別意識が強いと、親としての自分を特別視し、「親は子供を管理する立場だ」、「衣食住を与えていれば文句ないだろう」と考え、子供の気持ちに向き合わなくなります。
共感力が欠如していると、子供の内面に興味が持てず、目に見えて分かりやすい数字に執着しやすくなります。
そのため、自己愛性人格障害の親が教育熱心になると、子供への思いやりに欠ける子育てを行ってしまうのです。

まとめ

教育虐待と自己愛性人格障害の関係について解説しました。
教育虐待は、身体的虐待と心理的虐待、ネグレクトの要素を持ちます。
教育のつもりで教育虐待をする親は、思考や感性に問題がある毒親といっていいでしょう。
自己愛性人格障害の自己中心性、特別意識、共感力欠如の症状は、教育虐待の根本原因となります。

あなたの周りに、教育虐待をしている親はいませんか?
理由は何であろうと、親から子供への暴力は、虐待です。
「教育のための体罰は問題ない」という体罰容認論は、教育虐待親を助長させ、子供を追い詰めることになります。
教育虐待を受けた子供は、例え大人になって成功したとしても、自分を苦しめた親のことを恨んでいるものです。
「教育のため」が子供を苦しめる免罪符にならないよう、社会全体で子供を守るメッセージを発信することが重要でしょう。
また、親が教育虐待をしないよう、適切な教育について啓発する場も必要でしょう。