自己中心性とは?自己愛性人格障害の特徴

心理学用語の自己中心性(エゴセントリズム:egocentrism)とは、客観的事実に基づいて思考する能力と、他者の視点を想像し理解する能力が欠けていることです。
一般的に使われる自己中心性(selfishness)とは、他者への配慮を欠き、自分の利害や関心事しか考えられないことです。

自己中心性が見られる代表的な病気に、自己愛性人格障害NPD自己愛性パーソナリティ障害)があります。
自己中心的な性格は、個性などではなく、れっきとした病気なのです。
物事の認識には、主観と客観があります。
主観的な認知能力は誰でも持つものですが、客観的な認知能力は幼児期に獲得するものです。
幼児期(2~5歳)の子供は、自分を基準にして物事を解釈することしかできません。
幼児期に少しずつ、自分を客観視する能力や、自分とは異なる価値観があることを理解する能力が発達します。
つまり、幼児期の客観的認知能力の発達が乏しいと、自己中心性が高い大人となってしまうのです。
幼児期に客観的認知能力が発達しない原因は、親の育て方です。
子供は一番身近な存在である親から、客観的視点を学習します。
子供としっかりコミュニケーションをとらず、甘やかして子供の思い通りにさせていると、客観性は育まれません。
甘やかす子育てには、大きな問題があるのです。

自己愛性人格障害の自己中心性が引き起こす症状は、癇癪、利己主義、ネガ思考です。

【目次・自己中心性による症状】

それぞれの症状について、解説していきたいと思います。

自分の思い通りにならないと気が済まない

自己愛性人格障害者の多くは、自分の思い通りにならないと気が済まない性質を持ちます。
自分の思い通りにならないと些細なことで不機嫌になり、相手を威圧し考えを押し付けるモラハラをします。
また、症状が重い場合は、癇癪を起こして、暴言や暴力でパワハラをします。

自己愛性人格障害が癇癪を起こすメカニズムに、自己中心性が関わっています。
自己中心性により、自己愛性人格障害者は、「何でも自分の思い通りになるのが普通」という世界の中にいます。
そのため、思い通りにならないことがあると、裏切りを受けたような感覚に陥るのです。
それにより、極端に怒りが湧いたり、極端に落ち込んだりするのです。
また、自己中心性は、「自分の考えや価値観が絶対正しい」という感覚も生みます。
そのため、自己愛性人格障害者は、人格否定や価値観の押し付けといったモラハラやネット中傷を日常的に行います。
パワハラ、モラハラ、セクハラ、カスハラなどのハラスメント加害者の多くは、自己愛性人格障害なのです。

このように、自己愛性人格障害は自己中心性により、小さな暴君となるのです。

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自分の損得や保身しか考えられない

自己愛性人格障害者の多くは、利己主義であることが多いです。
あからさまに打算的なタイプもいれば、八方美人や事なかれ主義といった表面的に良い人を装うタイプもいます。
自己愛性人格障害が利己主義につながるメカニズムにも、自己中心性が関わっています。
自己中心性により、自己愛性人格障害者は、「自分が得をするか損をするか」という価値基準しか持たないのです。
人を利用することしか考えられず、WIN-WINの関係や信頼関係を理解することができません。
自己愛性人格障害者は、損得に異常に固執し、ほんの少しでも得をしようとします。
いわゆるポイント乞食やクーポン乞食が分かりやすい例です。
投資などの儲け話に弱く、詐欺のカモにされることもあります。

このように、自己愛性人格障害は自己中心性により、損得勘定で行動する人物になるのです。

自分に甘く人に厳しい

自己愛性人格障害者の多くは、自分に甘く人に厳しいことが多いです。
自分に甘く、自分に対して高い目標を設定せず、努力も継続せず、他力本願な傾向があります。
人から注意されても、言い訳や開き直りばかりで、反省や改善が見られません。
逆に、他者に対しては厳しく、他責的・他罰的傾向が見られます。
他者の良いところは見ようとせず、非難できるポイントばかり探そうとします。

自己愛性人格障害が他責他罰となるメカニズムにも、自己中心性が関わっています。
自己中心性から、自己愛性人格障害者は「自分は優れており人を叩く権利がある」と信じ込んでいます。
自己愛性人格障害者は、人を非難することで、優越感を得ようとするのです。
そのため、自己愛性人格障害者は、常に叩けるターゲットを求めるネガ思考に陥ります。
仕事や日常の会話でも、建設的な意見はほとんど言わないのに、ダメ出しばかりする傾向があります。
また、芸能人や政治家に対するバッシングも好みます。
近年では、ネットでの誹謗中傷を趣味とする自己愛性人格障害者が増えており、問題となっています。
自己愛性人格障害者は、自分に甘いため、自分の短所は棚に上げて他者をバッシングします。
例えば、不細工なのに芸能人の容姿を中傷したり、優れた労働者ではないのに他者にプロ意識を要求したりします。

このように、自己愛性人格障害は自己中心性により、自分に甘いダメ出し人間となるのです。

まとめ

自己愛性人格障害の自己中心性について解説しました。
自己中心性は、自己愛性人格障害の代表的な症状です。
我儘な性格や身勝手な性格の人がいたら、自己愛性人格障害を疑ってみましょう。

あなたの周りに、自己中心的な人はいませんか?
一見すると常識的に見える人でも、モラハラや打算、ネガ思考を感じる人には注意しましょう。
目立った我儘さが見られないタイプでも、人に対する気遣いが欠け、自分に対する気遣いは求めます。
そういった人が身近にいると、精神がジワジワとやられてしまいます。
自己中心性がある人物とは、精神衛生上、できるだけ接しないようにしましょう。