自己愛とは?自尊心(プライド)との違い

自己愛とは、他者からの評価によって自分の価値を認めることです。
自己愛が肥大化すると、自己愛性人格障害(NPD)という精神病となり、本人や周囲を苦しめることになります。
自己愛性人格障害は、自己中心性、特別意識、共感力欠如を特徴とする病気です。
また、過剰な承認欲求や支配欲、損得勘定を持つことが多いです。

最近、「自己愛」や「自己愛の肥大化」といった言葉を耳にしたり、ネットで見かけたりすることはありませんか?
近年、自己愛性人格障害者の数が増えていることで、「自己愛」について語られるようになったのです。
ここでは、自己愛とは何かについて深堀し、自尊心との違いや関係について解説したいと思います。

【目次・自己愛と自尊心】

自己愛と自尊心は正反対のものなので、セットで理解するのがいいでしょう。

自己愛と自尊心の違い

人間が生きて行くためには、「自分が大事だ」という観念が必要になります。
「自分が大事だ」という観念があることによって、人間は自身を守り、生きるための行動をとろうとするからです。
この無意識の観念には、自己愛(ナルシズム)と自尊心(プライド)の2種類あります。

自己愛(ナルシズム)…他者からの評価により、自分の価値を認めること
自尊心(プライド) …他者からの評価ではなく、自分自身で自分の価値を認めること

自己愛と自尊心の違いは、自分の価値の判断を自分の外に置くか、自分の中に置くかの違いです。
自尊心は自分で自分を守るためにあり、自己愛は他者に自分を守ってもらうためにあるのです。
つまり、自尊心が高いほど自立心が強くなり、自己愛が高いほど依存心が強くなるのです。
例えば、何か分からないことがあった時、自尊心の高い人はスマホなどで自分で調べて解決しようとし、自己愛が高い人は人に聞いて解決しようとする傾向があります。
自己愛と自尊心のバランスによって、人間性は以下のようになります。

自己愛と自尊心のバランスによる人間性
自己愛が高い自己愛が低い
自尊心が高い自分に自信があり、人に要求することを好む
(強気タイプの自己愛性人格障害)
自分に自信はあるが、人に頼るのが苦手
何でも一人で抱えようとする
自尊心が低い自分に自信がなく、人に依存する
(弱気タイプの自己愛性人格障害)
自分に自信がなく、人に頼ることも苦手
セルフネグレクトになりやすい

自己愛も自尊心も人間にとって必要なものですが、高すぎても低すぎてもいけないのです。
ちなみに、よく「プライドが高い」という言葉が使われますが、厳密には「自立心が高くて近寄りがたい」という意味であり、「周囲から特別な存在だと思われているだろうと考え、傲慢な態度をとる」という意味ではありません。

では、なぜ人間は、自尊心とは別に自己愛を持つのでしょうか?
それは、人間が社会性を持った生き物だからです。
人間は自分の力だけではなく、周囲と力を合わせることで繁栄してきました。
自分一人だけではできないことを、周囲と協力することで達成できるのが人間の強みです。
そのため、「他者からの評価」を求める自己愛が生まれたのです。
自己愛は、社会性の高い人間ならではの観念と言えるでしょう。

この自己愛が肥大化すると、自己愛性人格障害という病気になります。
自己愛性人格障害は、他者に対する思いやりが欠如し、自分の我儘を通そうとする迷惑な病気です。
次に、自己愛性人格障害になる原因について解説します。

自己愛が肥大化する原因と結果

自己愛が肥大化する原因は、幼少期の育て方にあります。
自己愛は幼少期に形成され、一度形成されると自己愛の大きさは変わることはありません。
幼少期に「自分の思い通りになる経験」をすればするほど、自己愛は大きくなります。
つまり、適切な躾をせず、子供を甘やかして育てると、自己愛が肥大化するのです。
簡単に言えば、「自己愛が肥大化する=我儘になる」ということです。
近年の「叱らない子育て」や「子供の意志を尊重する子育て」は、やり方を間違えると、子供を自己愛性人格障害にするリスクがあるのです。
自己愛性人格障害になると、大人になっても、周囲の人が自分に対して溺愛親と同じ行動をとることを無意識に求めます。
人から指示されるのが我慢できない、人から指摘を受けると深く傷ついたり逆ギレしたりする、といった幼稚な人間性になります。
「今時の若者は傷つきやすい」、「今時の若者は褒めばかり求める」というのは、若者全般ではなく、自己愛性人格障害の若者の特徴なのです。

このように、親の育て方が悪いと、自己愛が肥大化し、自己愛性人格障害となってしまいます。
次に、自尊心が自己愛性人格障害に与える影響について解説します。

自己愛性人格障害は自己愛と自尊心がポイント

自己愛が必要以上に肥大化するのが、自己愛性人格障害という病気です。
自己愛性人格障害は、自尊心が高いか低いかによって、強気タイプと弱気タイプに分けられます。
自己愛も自尊心も高い場合は強気タイプとなり、自己愛は高いものの自尊心は低い場合は弱気タイプとなります。
強気タイプの自己愛性人格障害は、傲慢な性格が特徴です。
子分を作りたがり、周囲に自分の考えや価値観を押し付け、要求を聞かせることを好みます。
スクールカーストやママ友グループ、ヤンキーグループでボスとして振る舞おうとする傾向があります。
弱気タイプの自己愛性人格障害は、卑屈な性格が特徴です。
強気タイプの子分となることを好み、自分を守ってもらったり、得をさせてもらおうとしたりします。
自分一人で強い行動をとることができず、強気タイプの陰に隠れてイジメをする傾向があります。

強気タイプであれ弱気タイプであれ、自己愛性人格障害は、社会に対して大きな悪影響を与えます。
毒親、DV、パワハラ・モラハラ、ストーカー、いじめ、ネットの誹謗中傷といった社会問題の加害者となるからです。
強気タイプは主犯格、弱気タイプは共犯者となるのです。
現代は、「甘やかす子育て」が浸透したことで、自己愛性人格障害者が増加しています。
自己愛性人格障害の特性について理解し、対処することが必要な時代なのです。

関連記事:「イジメとは?自己愛性人格障害の特徴」

まとめ

自己愛と自尊心、その結果の自己愛性人格障害について解説しました。
自己愛と自尊心は、どちらも人間に欠かすことのできないものです。
しかし、自己愛が肥大化すると自己愛性人格障害となっていしまいます。
これからの時代は、自己愛性人格障害を生み出す「甘やかす子育て」にNOを突き付けなければいけません。
子供の個性や意志を尊重することは、もちろん大事なことです。
しかし、それと同時に、「他者に対する思いやり」も教えなくてはいけません。
「他者に対する思いやり」は、親が教えないと、子供が自力で気づくことは難しいのです。
正しい自己愛と正しい自尊心を持った人に育てることが、親の役割であり、子供が幸せになる方法なのです。