暴力には2種類ある!危険な暴力の見分け方(DV、虐待、いじめ)

暴力には、大きく分けてキレ系暴力と、モラ系暴力の2種類あります。暴力から自分の身を守るにも、暴力を受けている人を助けるにも、暴力癖そのものについて理解する必要があります。自己愛性人格障害(NPD)が、暴力癖の根本原因となっているケースが多いです。

家庭内暴力(DV)、親から子への暴力(虐待)、学校での暴力(いじめ)など、現代はまだまだ暴力被害を受けている人が数多くいます。
暴力から自分の身を守るにも、暴力を受けている人を助けるにも、暴力癖そのものについて理解する必要があります。
暴力には、大きく分けてキレ系暴力と、モラ系暴力の2種類あります。
暴力時に理性を保っているかどうかが大きなポイントで、アンガーコントロールが関係します。

DV加害者の特徴・自己愛性人格障害
虐待する人の特徴・自己愛性人格障害
いじめ加害者の特徴・自己愛性人格障害

被害を受けている暴力がどちらの種類なのかによって、危険性の高さや対処法が変わってきます。
特に、キレ系暴力は命の危険にまで及ぶ可能性が高いため、相手が変わることを期待せず、すぐに逃げる、距離を置く必要があります。

また、自己愛性人格障害(NPD)という精神疾患が、暴力癖の根本原因となっていることが多いです。
暴力癖を持つ自己愛性人格障害者を見抜くことも、自己防衛のために重要です。

キレ系暴力

怒りのスイッチが入り、理性を失った状態で瞬間的な暴力を加えるのが、キレ系暴力です。
怒りの感情に任せて人に殴る蹴るの暴行を加えたり、部屋で暴れて物を壊したりするのが特徴です。
キレ系暴力の原因は、アンガーコントロール能力の欠如です。
キレ系暴力は、加害者の顔が目をむき鼻を膨らませた怒りの形相になっていることで、モラ系暴力と見分けることができます。

キレて暴力を振るうというと、街中で他人に因縁を付けて突然暴力を振るう、ヤンキーを想像する人が多いかもしれません。
しかし、キレ系暴力は、見た目が普通そうな人が、家庭内で行っているパターンも多いのです。
例えば、妻や彼女に暴力を振るった後、我に返って「もうしないから」と必死に謝るDV加害者は、キレ系暴力の典型です。
日頃は普通の親が、不機嫌のスイッチが入った瞬間だけ、子供を突き飛ばしたり、叩いたりするのも、キレ系暴力です。
暴力を振るっている時の自分と、平常時の自分が別物であるかのような感覚に陥っているのです。

DV加害者の特徴・自己愛性人格障害
虐待する人の特徴・自己愛性人格障害

暴力の中で、最も危険性が高いのが、重度のキレ系暴力です。
理性を失う時間が長ければ長いほど、暴力が多く発動し、苛烈になるからです。
一発殴るだけでは気が済まず何発も殴る、怪物のように部屋中暴れまわるといった、コントロール不能状態となるからです。
命に関わるような激しい暴行を加えておいて、「そこまでするつもりはなかった」と言い訳し、自身の責任を軽く考える点でも悪質です。

また、キレ系暴力をする人にも、キレる直前までは理性があります。
つまり、相手や状況によって、キレるか我慢するか選択するフェーズがあるのです。
例えば、ガタイのいい男性は自分より弱そうな人に暴力を振るい、細い男性は女性や子供に暴力を振るい、女性は子供に暴力を振るいます。
また、外面を気にする保身タイプの場合、第三者の目が届かない家庭内だけでキレて暴力を振るうため、職場や近所の人には普通の人だと認識されていて、問題が発覚しにくいケースも多いです。

大人だけでなく、癇癪持ちの子供が些細な出来事で暴れて他の児童を他害するのも、キレ系暴力です。
発達障害やパーソナリティ障害が原因になっているため、早期に療育を受けさせなければなりません。
アンガーコントロールの欠如は、大人になってから治す方が、難しいからです。
DV夫の暴力癖を改善させたい場合も、メンタルクリニックやアンガーコントロールのセミナーを利用します。
本人に治す意志がないと治すことは不可能なので、その場合は、被害者側が縁を切って逃げるしかありません。

モラ系暴力

相手への嫌がらせや、威圧のための攻撃など、目的のために常習的な暴力を加えるのが、モラ系暴力です。
モラ系暴力は、理性を失っているキレ系暴力とは異なり、理性による意図的な暴力です。
ストレス発散、力関係の誇示、相手を自分に従わせるための道具として、暴力を利用するモラハラ気質からくるものです。
モラ系暴力の原因は、共感力や倫理観の欠如です。
モラ系暴力は、加害者が笑っていたり、バカにした表情をしていたりすることで、キレ系暴力と見分けることができます。

例えば、学校でのいじめによる暴力の多くは、モラ系暴力でしょう。
気に食わない相手への嫌がらせ、イライラによる八つ当たり、上下関係の誇示、仲間内で面白がるためといった目的を持っていることが多いからです。
モラ系暴力は、ターゲットが常習的に被害に遭ったり、加害者が集団であることが多いのも特徴です。

いじめ加害者の特徴・自己愛性人格障害

モラ系暴力は、理性によってコントロールされているため、キレ系暴力に比べると、命に関わるリスクは低いです。
しかし、常習的なモラ系暴力の被害も当然、人格形成や精神疾患に悪影響を与えます。
虐待やいじめの加害者が元気な人生を送り、被害者が対人恐怖症などの精神疾患に一生苦しめられるといったパターンがよく見られます。
モラ系暴力の加害者は、共感力や倫理観の乏しさから、罪悪感を抱くことも反省することもないからです。

暴力と自己愛性人格障害の関係

自己愛性人格障害(NPD)は、暴力ととても親和性の高い精神疾患です。
キレ系暴力をする人も、モラ系暴力をする人も、自己愛性人格障害の可能性が高いです。

自己愛性人格障害者は、自分の思い通りにならないと気が済まない自己中心性が強いため、怒りや不機嫌のスイッチが入りやすいです。
そのため、カッとなって暴力を振るうキレ系暴力の加害者になりやすいのです。

また、自己愛性人格障害者は、共感力が乏しく、人の気持ちを想像できないという特徴もあります。
自己中心性が強いことから、倫理観も乏しく、自分さえ良ければいいという発想になりやすいです。
そのため、自分がすっきりするため、仲間内で面白がるためといった動機で、モラ系暴力の加害者になりやすいのです。
また、自己愛性人格障害者は、上下意識も強く、自分が優位に立ちたい、見下せる対象が欲しいという欲求があるため、暴力によって相手を支配するために、モラ系暴力を行うこともあります。

自己愛性人格障害者は、キレ系暴力とモラ系暴力の両方のリスクがある危険人物なのです。

まとめ

暴力の種類と自己愛性人格障害の関係について解説しました。
暴力にはカッとなり理性を失った状態で行うキレ系暴力と、理性に基づき目的のために行うモラ系暴力に分けられます。
また、これらの暴力傾向は、自己愛性人格障害の症状であることも多いです。

暴力癖は単なるやんちゃではなく、れっきとした精神疾患で素人だけで治せるものではありません。
家庭内暴力にしても、学校のいじめにしても、当事者だけで解決できるものではないのです。
暴力被害を受けた側を自己責任とするのではなく、加害者側を隔離するなり、治療を受けさせるなりするべきなのです。